そういった疑問に答えます。
本記事では、心理学者のエリクソンの功績や、彼が提唱した概念や理論を詳しく、そして丁寧に解説します。
ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
エリクソンについて
エリクソンて誰?
エリク・ホーンブルガー・エリクソン(Erik H. Erikson、1902年6月15日-1994年5月12日)は、ドイツ出身のアメリカの発達心理学者、精神分析家です。
エリクソンは発達過程における人間の心理的・社会的な課題を研究し、彼の理論は現在も広く用いられているんですよ。
そして、実はエリクソンはモンテッソーリ教師でもあったんです(参照研究)。
モンテッソーリ教育と発達心理学は密接に関係していますからね。
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エリクソンの生涯
ヨーロッパにて
エリクソンは1902年にドイツのフランクフルトで生まれましたが、幼少期に母親を亡くし、父親は彼を育てることができませんでした。
エリクソンは後に母方の祖父母に引き取られ、人間的価値観や芸術に対する興味を持つようになりました。
その後、彼は精神分析に興味を持ってウィーンに移り、あの有名な精神分析家ジークムント=フロイトの娘アンナ=フロイトと結婚し、彼女と共にアメリカに移住しました。
異人同士がつながった歴史的な出会いがあったんですね。
アメリカにて
アメリカでは、エリクソンは精神分析の分野で働きながら、発達心理学の研究にも従事しました。
彼は、幼児期から老年期までの発達段階を研究し、各段階での心理的課題を特定し、それらが解決されることで健康な発達が促進されると主張しました。
彼の著書『幼年期と社会』(Childhood and Society)は、この分野では名著となっています。
エリクソンの心理学での功績
エリクソンは心理学において、4つの大きな概念を提唱・構築しました。
- 発達心理学におけるライフサイクル理論
- アイデンティティ
- モラトリアム
- 基本的信頼感
個別に説明していきますね。
発達心理学におけるライフサイクル理論
ライフサイクル理論の概要
ライフサイクル理論とは、生涯における自我の発達を8つの段階に分けて整理する理論です。
自我は生涯において発達するという前提に立っています。
ライフサイクル理論によると、各段階にはポジティブな要素とネガティブな要素が拮抗しているのですが、ポジティブな要素が勝てば、その段階で特定の人格的活力が得られてよりよく成長していくとされています。
ただ、ポジティブな要素だけ身につければいいわけではなくて、ネガティブな要素との拮抗の末にポジティブが勝つという、そのプロセスが大切とされています。
各発達段階の解説
乳児期(0~1歳半)
乳児期は、一人で生きられず、主にはお母さんと時間を過ごします。
なので、お母さんとの間に信頼感と不信感という2つの拮抗した要素が存在します。
子どもは、自分の欲求が満たされない不信感と、世話してくれることで得られる信頼感の2つを経験します。
どちらか1つだけではダメで、『基本的信頼感』と『基本的不信感』の2つを経験することが大切です。
そのうえで基本的信頼感が勝ることで、『希望』という人格的活力が備わるわけですね。
幼児期初期(1歳半~3歳)
乳児期を過ぎると、言語が急速に発達すると同時に自我の目覚めが起こります。
自発的に何かをやりたいけれど、うまくいかずに失敗する経験を何度も繰り返すのです。
なので、この段階では『自律性』と『恥や疑惑』が拮抗し、乗り越えることが課題となります。
ポジティブな『自律性』が勝ることによって『意志』という人格的活力を得られるわけですね。
幼児期後期(3~6歳)
幼児期後期は遊戯期とも言われており、自分で積極的に行動する時期です。
言語もかなり発達し行動範囲も広がることもあって、ここでのポジティブな要素は『積極性』です。
しかし、積極的なあまり、他の子どもや大人との衝突や競争も増えてきます。
その結果、『罪悪感』というネガティブな要素も芽生えます。
つまり、『積極性』と『罪悪感」の拮抗です。
自分の行動でうまくいったなどの成功体験で自信がついてくると、『目的』という人格的活力を得られます。
学童期(6~13歳)
学童期は文字どおり学びの時期です。
幼児期後期の影響を受けて『積極性』と『罪悪感』を抱えつつも、学校という場で他の子どもたちと関わりながら、得意・不得意を見つけていきます。
幼児期に培った『積極性』を駆使して、学業という日々の『目的』を達成していくための『勤勉性』がポジティブな要素となります。
一方で、失敗や勝てないライバルの存在によって悔しい思いをすることで『劣等感』が生まれる時期でもあります。
なので、学童期には『勤勉性』と『劣等感』が拮抗します。
ポジティブな『勤勉性』が勝ることで、多くの『やればできるんだ!』を経験しますから、『自己効力感』という人格的活力を得られるわけですね。
青年期(13~22歳)
青年期は、第二次性徴や異性への関心などがあり、非常に多感な時期です。
厨二病の発症時期とも重なります。
より広いコミュニティで生活する中で、『自分とは?』『生きる意味は?』といった哲学的難問に真正面からぶち当たり、疑問や葛藤を抱きます。
自分の過去を思い返すと、まさにこれですね。。
また、理想の人物や俳優、アイドルが現れ、『あの人のようになりたい!』とマネしだすころでもあります。
これを『同一化』と言います。
ただ、夢はいつか覚めるもの。
『同じ人間なんだな』と思うようになり、自分自身の思考や世界を築き始めます。
これが『自我同一性(アイデンティティ)の確立』です。
一方で、アイデンティティをうまく確立できずにフラフラすることもあります。
人間ですからね。
これは『アイデンティティの拡散』、つまり散らかってしまう状態です。
青年期には、『アイデンティティの確立』と『アイデンティティの拡散』が拮抗します。
ポジティブが『アイデンティティの確立』が勝れば、自身の居場所を認識でき、『忠誠心や帰属感』という人格的活力を得られます。
成人期初期(22~40歳)
アイデンティティを確立できると、社会だけでなく友人や恋人と親密な関係性を構築していきます。
『親密性』というポジティブな要素ですね。
一方で、相手ありきのことなので、『自分がまちがっていた・・?』『受け入れてもらえないのでは・・?』というネガティブな要素『孤独感』を抱くこともあります。
『親密性』と『孤独感』との拮抗です。
ポジティブな『親密性』が勝れば、『幸福感や愛』という人格的活力を得られます。
壮年期(40~65歳)
この時期は、『世代性』がポジティブな要素です。
『世代性』とは、次の世代を支えていくための子孫やアイディア、技術などを生み出すなどにより、将来に積極的に関心を持つことです。
これまで培ってきたものを伝えていこうとする姿勢ですね。
ただ、次世代への関心が薄かったり、日常的に関わりがなかったりすると、自己満足や自己陶酔に陥り、ネガティブな『停滞』が顔を出します。
頑固な中年の爆誕ですね。
『世代性』と『停滞』との拮抗の結果、ポジティブな『世代性』が勝てば、『世話(ケア)』という人格的活力を得られます。
老年期(65歳以上)
老年期はいわゆる高齢者ですね。
身体的な機能の衰えはまちがいなく訪ずれますが、積み上げてきた知識や経験、人徳が集大成となって完成していく時期です。
老年期のポジティブ要素は『自我の統合』です。
これは、世の中の秩序や意味を探し求めてきた自分自身の人生は、よいものだった。。。と受け入れられることです。
これまでの人生を受け入れる受容力があればこそ、その先の人生の終焉を受け入れられるというものです。
人生の終焉を受け入れられず、衰えに対する恐怖を抱けば、ネガティブな要素『絶望』が出てきます。
自我の統合が絶望を上回れば、『知恵』という人格的活力を授かることになります。
アイデンティティ
エリクソンは、発達心理学におけるアイデンティティ(自我の同一性)の概念を提唱しました。
上で説明したとおり、青年期(13〜22歳)の発達に深く関連する概念ですね。
論文『エリクソン心理社会的段階目録(第5段階)12項目版の作成』(畑野快etc.)で紹介されているとおり、エリクソンによれば、アイデンティティとは、
個人が自分の内部に斉一性と連続性を感じられることと、他者がそれを認めてくれることの両方の事実の自覚
とされています。
ただ、エリクソン自身は、アイデンティティという概念を厳格に決めてしまうことは避けていたようです。
『アイデンティティーと青年の危機』(IdentityーYouth and Crisis 1968)の序文で、エリクソンは「アイデンティティという概念について定義的説明(definitive explanation)をするつもりはなく、定義すればするほどこの言葉は不可解な何物かをさす術語となってしまうが故に、種々の分脈の中でその不可欠性を立証する以外にアイデンティティを探求することはできない」とのべ、
人の心の発達に関することなので、その発達の程度や様子は十人十色です。
明確に定義することはできないということでしょう。
エリクソンにとっては、それほど重いテーマだったに違いありません。
モラトリアム
モラトリアムも青年期(13〜22歳)の発達に深く関連します。
モラトリアムは、元々は経済用語です。
戦争や災害などの緊急事態が生じた際に、支払いの猶予を認める一定の期間のことです。
エリクソンは発達心理学の分野にモラトリアムの言葉を輸入したわけです。
エリクソンは、青年期において『オリジナルな自分』を形成していく期間を『心理社会的モラトリアム』と呼んでいました。
アイデンティティの確立と拡散との間で揺れ動いている時期というわけですね。
基本的信頼感
基本的信頼感は、乳児期(0~1歳半)に深く関連する概念です。
この時期は母親を中心に家族に見守られ、安心できる環境を通して世界を信頼できるようになります。
参考までに、カウンセリング しらいしは、基本的信頼感を得られるようにするために以下を推奨しています。
2歳くらいまでは多くは母乳やあやしなど触れ合うことなどによって、安心できる家族の状態を作ること
0〜1歳半くらいは物心がついていないと思われていますが、発達心理学ではしっかりと環境の影響を受けると考えられているのですね。
エリクソンをもっと知りたい方へ
おすすめの書籍を紹介しておきます。
ライトな読み物としてはこちら。
しっかり学びたい人向けです。
まとめ
本記事では、心理学者エリクソンについてご紹介しました。
以下にまとめます。
- エリクソンは、ドイツ出身のアメリカの発達心理学者、精神分析家で、あのジークムント=フロイトの娘であるアンナ=フロイトの夫
- ライフサイクル理論、アイデンティティ、モラトリアム、基本的信頼感を提唱
- ライフサイクル理論は生涯を8つの段階に分けて整理
- 乳児期(0~1歳半)
→基本的信頼感と基本的不信感が拮抗し、希望の獲得を目指す - 幼児期初期(1歳半~3歳)
→自律性と恥や疑惑が拮抗し、意志の獲得を目指す - 幼児期後期(3~6歳)
→積極性と罪悪感が拮抗し、目的の獲得を目指す - 学童期(6~13歳)
→勤勉性と劣等感が拮抗し、自己効力感の獲得を目指す - 青年期(13~22歳)
→アイデンティティの確立とアイデンティティの拡散が拮抗し、忠誠心や帰属感の獲得を目指す - 成人期初期(22~40歳)
→親密性と孤独感が拮抗し、幸福感や愛の獲得を目指す - 壮年期(40~65歳)
→世代性と停滞が拮抗し、世話(ケア)の獲得を目指す - 老年期(65歳以上)
→自我の統合と絶望が拮抗し、知恵の獲得を目指す
- 乳児期(0~1歳半)
- アイデンティティは個人が自分の内部に斉一性と連続性を感じられることと、他者がそれを認めてくれることの両方の事実の自覚とされているが、エリクソン自身は厳格な定義づけを避けていた
- エリクソンは、青年期において『オリジナルな自分』を形成していく期間を『心理社会的モラトリアム』と呼んでいた
- 基本的信頼感を得るために、乳児期(0〜1歳半)には母親を中心に触れ合うことにより、安心できる家族の状態を作ることを推奨(カウンセリングしらいし)