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その中で、聞き慣れないキーワードに遭遇したときは、本を読んだりして知識を深めてから発信するように心がけています。
本記事では、『愛着障害』を学べる本『マンガでわかる 愛着障害』のレビューをまとめていきます。
こんな方々におすすめ
- もしかしたら自分は愛着障害では?
- 自分のパートナーや大切な人が愛着障害では?
- わが子がそうならないように、愛着障害について知っておきたい
愛着障害とは?
愛着障害は、以下のとおりに説明されています。
愛着障害とは、乳幼少期に何らかの原因により、母親や父親など特定の養育者との愛着形成がうまくいかず問題を抱えている状態のことを言います。
愛着障害という概念が最初に見出されたのは、第二次大戦後のヨーロッパで行われた戦争孤児の調査だそうです。
戦争孤児が生育していくと、成長不良や発達の問題を抱えるようになったんですね。
当初は『母性剥奪』と呼ばれていましたが、『愛着障害』が使われるようになったのは、虐待やネグレクトの問題がクローズアップされるようになってからです。
愛着障害は新しい用語なのですね。
書籍『マンガでわかる 愛着障害』の概要
著者など
本書は、以下の方々によって創られています。
- 監修:岡田尊司(おかだ たかし)
- 漫画:松本耳子(まつもと みみこ)
岡田さんの専門家としての知識体系がどっしりと土台にあり、松本さんの温かみのある作画によって一気に親しみやすくアレンジされています。
岡田尊司(おかだ たかし)さん
精神科医で、京都医療少年院などで困難な課題を抱えた若者と向き合ってこられました。
東京大学文学部を中退して、京都大学医学部に入り直すという、ガチンコの天才ですね。。
岡田さんは、愛着障害の入り口として以下の書籍も出版されています。
また、愛着障害を克服する方法についても書籍化されています。
松本耳子(まつもと みみこ)さん
漫画家です。
漫画雑誌の連載や実話系4コマ漫画などでご活躍です。
松本さんご自身が毒親に育てられたとのことで、毒親系のコミックエッセイも多数出版されています。
あらすじ
漠然とした不安感を抱えて生きる主人公・莎菜(さな)は、『アトリエ』というアートスクールと出会います。
愛着障害を抱えたひとびとが集まる『アトリエ』をベースに、莎菜と恋人との関係構築を、専門家視点の解説を入れながら辿っていきます。
ところどころに、愛着障害を抱えた著名人のエピソードが挿入されているのがいいですね。
『マンガでわかる 愛着障害』の書評
全体感
知識量は多めです。
マンガ系の書籍は、マンガに重きを置くか、伝えたい内容に重きを置くかで、マンガと知識のバランスが変わってきます。
僕が感じたのは、本書に載せられた知識の豊富さ、学びの多さです。
マンガを純粋に楽しみたい人にとっては、少し重めの内容かもしれません。
ですが、知識欲が旺盛な僕にとっては、読み応えがあって得るものが多かったですね。
また、エピソードや具体例が多いので、愛着障害を身近に感じることができました。
あんなすごい人が愛着障害だったのか、とか、愛着障害を持つ人がどんな気持ちを抱え、どんな行動をするのかなど、イメージをつかみやすかったです。
では、特に僕が着目したポイント3つをご紹介します。
着目したポイント
- 愛着障害は環境のせい
- 作家は愛着障害が多い
- 安全基地
ポイント1: 愛着障害は環境のせい
アートスクール『アトリエ』には、セラピーのクラスで協力してくれる精神科医の岡田先生がいます。
(モデルはもちろん岡田尊司さんですよね)
その岡田先生がこう言っています。
『愛着が不安定になる最大の要因は乳幼児期の生育環境です。環境に問題があったワケで、あなたたちの落ち度とか責任とかではないのです。』
本書から引用
莎菜が安堵していましたが、自分を責めるべきものではないのですよね。
ポイント2: 作家には愛着障害が多い
意外と知られていませんが、作家には愛着障害を抱えたひとが多いんです。
本書では以下の例が紹介されていますよ。
愛着障害を抱えた作家の例
- 太宰治
- 夏目漱石
- ヴァン=ゴッホ
- 川端康成
岡田先生が言うには、創作という行為が愛着の傷を癒そうとする無意識の衝動に駆り立てられたものだから、だそうです。
傷を反動の力に変えて躍進した例ですね。
ポイント3: 安全基地
安全基地は、物理的な要塞ではありません。
いつもずっとどんな自分でも、無条件に受け入れてくれる存在、心の拠り所のことです。
安全基地の要件として次の5つが紹介されています。
安全基地の5つの条件
- 安全安心: 一緒にいても傷つけられず、『大丈夫だよ』と言ってくれる
- 応答性: 相手が求めているときに応じてあげられる、余計なことはしない、肩代わりまではしない
- 共感性: 相手の意思や気持ちを尊重し、決めつけや押しつけがない
- 安定性: 一貫した態度をとる
- 誠実さ: フリやポーズではなく、本心からその人のことを考えて、大事なことはちゃんと言ってくれる
これはまさに無償の愛。
わが子に対する母の愛そのものな気がします。
成人してから他人と安全基地の関係を築くのは、よほどの信頼と愛情がベースにないと難しそうだな、と感じました。
安全基地については論文等を調べて記事を書いたので、ぜひ参考にしてください。
まとめ: 愛着障害という生きづらさを知るきっかけとしておすすめ
本記事では、書籍『マンガでわかる 愛着障害』のレビューをご紹介しました。
以下にまとめます。
ポイント
- 愛着障害とは、乳幼少期に何らかの原因により、母親や父親など特定の養育者との愛着形成がうまくいかず問題を抱えている状態
- 監修:岡田尊司(おかだ たかし)、漫画:松本耳子(まつもと みみこ)
- 全体感: 知識量は多め。具体例も多いので、イメージをつかみやすい。
- ポイント1: 愛着障害は自分のせいではなく、幼児期の生育環境の問題が原因。
- ポイント2: 作家には愛着障害が多い。創作は傷を癒そうとする行為だから。
- ポイント3: 安全基地。5つの条件で成り立ち、いつもずっとどんな自分でも、無条件に受け入れてくれる存在、心の拠り所。
ぜひ一度お手にとってみてくださいね。