DPのこと、本記事で知ってもらえたらうれしいです。
丁寧に説明するので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。
国際バカロレア(IB)とは
国際バカロレア(IB)は、1968年にスイスで設立され、現在では150以上の国と地域で実施されている国際的な教育プログラムです。
IBは、幼稚園から高校生まで幅広い年齢の子どもを対象としており、知識の詰め込みではなく、探究型学習を中心に、自己管理や批判的思考力を育てることに重きを置いています。
学習者が自ら考え、問題を発見し、解決策を見つけ出す能力を育む教育が特徴です。
モンテッソーリ教育とも対比されることがありますね。
IBの概要記事にまとめたので、全体像はぜひこちらを読んでみてください。
IBのDPとは
DPとは、Diploma Programme(ディプロマ・プログラム)の頭文字をとったものです。
ディプロマは、学校の卒業証明書の意味で使われます。
なので、IBのDPといえば、IBの修了証明書を取得できるプログラムだと思ってください。
IBの概要記事に記載したとおり、IBには4つのプログラムがあるのですが、そのうちの最終段階の一つがDPというわけです。
DPのカリキュラム構成
DPを1枚のスライドにしました。
DPは、6つの学習分野と3つのコア科目で履修し、最後に試験を受けて修了できます。
6つのグループ科目
6つのグループから1つずつ教科を選んで計6教科を2年間で学びます。
DPの対象は16~19歳の学生ですが、対象年齢幅が3年というだけで、カリキュラム自体は2年間なのですね。
学習分野は以下の6つです。
DPの6つの学習グループ
- 言語と文学(母国語)
- 言語習得(外国語)
- 個人と社会
- 理科
- 数学
- 芸術
この6つの分野から1つずつ選ぶわけです。
ただし、『芸術』に関しては、他のグループの科目に変更することができます。
コア科目
コア科目は以下の3つです。
3つのコア科目
- 課題論文
- 知の理論
- 創造性・活動・奉仕
課題論文(EE:Extended Essay)
生徒個人が研究したことを、4000語(日本語は8000字)程度の論文にまとめます。
知の理論(TOK:Theory of Knowledge)
知識の本質を学ぶ科目です。
先人による世界の理解を参考に、ものごとの本質を問い、それに応える方法を学びます。
創造性・活動・奉仕(CAS:Creativity/Activity/Service)
芸術、運動、ボランティアなどの体験学習を行います。
DPの使用言語
DPでは、原則として、英語、フランス語又はスペイン語を使って履修します。
ただ、文科省が国際バカロレア機構と協力して、徐々に日本語での履修範囲を拡大しています。
DPでの評価方法
評価は主に内部評価と試験とに基づきます。
科目評価
DPでは、各科目が1~7のスコアで評価され、6科目合計で最大42点となります。
さらに、コア科目のうち課題論文(EE)と知の理論(TOK)の組み合わせで最大3点が加算されます。
つまり、満点は45点です。
45点満点のうち、原則として24点以上を取得する必要があります。
ただし、24点以上であっても不合格となる場合があるので、注意が必要です。
不合格条件については、国際バカロレア機構が発行している『Assessment Principles』の”Failure Conditions”(P.220)を参照ください。
国際バカロレア試験
最後に国際バカロレア試験をクリアすれば、DPを取得して修了証書を得られます。
国際バカロレア試験は、年に2回、世界で一斉に開催されます。
これは、国によって学校の年度の時期が違うので、公平に対応できるようにという配慮ですね。
試験は国際的に統一され、外部試験官によって採点されます。
スコアの厳密さはIB DPの信頼性を支える重要な要素です。
日本におけるIB DPの現状
日本でも、IB DPの導入校は年々増加しています。
文部科学省がIB認定校の拡大を進め、日本の教育と国際的な教育の橋渡し役として位置付けているんですよね(文科省の動き)。
現在、約60校がDPを提供しており(参照)、国内外の大学入試においてもDP資格が広く認知されています(参照)。
参考サイト:文部科学省IB教育推進コンソーシアム
人生におけるDPの影響調査
国際バカロレア機構のリサーチ部門が、DP履修者の『その後』を調査しています。
詳細はレポートに譲りますが、わかりやすい結果を紹介します。
グローバルな視野
6カ国を対象に、『世界価値観調査(World Values Survey)』によって、グローバルな視野を持っているかどうかを調査しました。
2021年にその結果が出ています。
DPに加えてCP(キャリアプログラム)の生徒も含まれているのですが、6カ国全てで、比較対象者のグループよりも高いスコアを出しており、グローバルな視野をより強く身につけていることがわかりました。
大学進学
米国での2013年の調査結果ですが、高校卒業後にDP取得を目指す学生は、全米平均(66%)よりも高く84.6%が大学に進学しています。
そして、進学先の大学で翌年も同じ大学に通っている学生は、全米平均(80%)よりも高く90.4%でした。
DPの効果が見てとれますね。
まとめ
本記事では、国際バカロレアのDPについて詳しく説明しました。
以下にまとめます。
本記事のポイント
- 国際バカロレア(IB)については解説記事を参照
- IBのDPとは、IBの修了証明書を取得できるプログラムのこと
- DPのカリキュラムは、6つのグループ科目と3つのコア科目からなり、グループ科目からは各1科目ずつ選択する
- DPの使用言語は、原則として英語、フランス語又はスペイン語だが、文科省が国際バカロレア機構と調整して、日本語も徐々に使えるようになってきている
- DPでの評価方法は、45点満点の科目評価と、国際バカロレア試験
- 日本においては、文科省の取り組みもあり、DPカリキュラムを取り入れる学校が増え、DPを持っている学生の入学枠を持つ大学も増えてきた
- 国際バカロレア機構の追跡調査によると、DPカリキュラムを受けた人の人生には好影響を与えている