IBはじわりじわりと広がってきていますよ。
学びに関しても国境がなくなりつつある現代では知っておいて損はない教育プログラムです。
ぜひ本記事でIBの概要や文部科学省の取り組みだけでも把握してくださいね。
IBとは? – 国際バカロレアの概要
国際バカロレア(IB; International Baccalaureate)とは、1968年にスイスで設立された教育プログラムで、世界に認められた大学入学資格を取得することができる国際的な教育制度です。
(バカロレアのスペルが難しすぎますね。。。)
国際バカロレアの概要記事で全体像を解説していますので、詳細はそちらに譲るとして、ここではポイントだけ。
対象年齢は3歳から19歳まで。
スイスのジュネーブにある国際バカロレア機構が統括しています。
幼児期から取り組める点では、モンテッソーリ教育と共通していますね。
IBには、対象年齢に応じて4つの主要なプログラムがあります。
IBのプログラム
- 初等教育プログラム(PYP); 3~12歳
- 中等教育プログラム(MYP); 11~16歳
- ディプロマプログラム(DP); 16~19歳
- キャリア関連プログラム(CP); 16~19歳
IBは、単なる知識の習得だけでなく、批判的思考や問題解決能力、グローバルな視野を持った人材の育成を目指しており、生徒たちは6つの教科グループの中から選択し、幅広い科目を学びます。
6つの教科グループ
- 言語と文学(母国語)
- 言語習得(外国語)
- 個人と社会
- 理科
- 数学
- 芸術
ちなみに、こちらの記事でも紹介した『STEAM教育』しかり、芸術がカリキュラムに入っている点はやはり気に留めておかなければなりませんね。
2024年6月時点では、IBのプログラムは、世界約160の国・地域の約5,800校で実施されているんですよ(出典)。
参考資料; 国際バカロレアの普及促進に向けた検討に係る有識者会議
IBと日本の教育制度との違い
国際バカロレア(IB)と日本の伝統的な教育制度にはいくつかの重要な違いがあります。
ここでは、
- 主体性
- 範囲
の2つで説明します。
主体性
まず、IBは生徒が主体的に学び、批判的思考や問題解決能力を育むことに重きを置いています。
生徒は知識を覚えるだけでなく、論理的に考え、他者と協力しながら学ぶ姿勢が求められます。
一方、日本の教育制度は、受験に備えた知識習得や詰め込み型教育が中心となることが多く、必ずしも生徒の自主性や創造力を引き出すことに力を入れているわけではありません。
僕を育ててくれた学校システムを作った文部科学省をディスるつもりはないのですが、社会に出て広く世の中を知るようになると、至らない点も見えてきちゃいますよね。
範囲
IBでは多様な評価方法が導入されており、エッセイやプレゼンテーション、社会活動への参加など、学問以外のスキルも重視されています。
これに対して、日本の教育は、特に大学入試においては筆記試験の成績に強く依存しています。
IBプログラムがもたらす教育的メリット
国際バカロレア(IB)は、生徒に多くのメリットをもたらします。
ここでは、
- 海外の大学への進学
- 多面的な成長
の2点で説明します。
海外の大学への進学優位性
まず、IBは世界的に認知された教育資格であり、世界中の大学に進学する際に有利な資格となります。
特に、16歳から19歳を対象としたディプロマプログラム(DP)は、グローバルな視点を持つ人材の育成を目指しており、批判的思考や問題解決能力、自己管理力が強化されます。
DPに関する国際バカロレア機構の表現は以下のとおりです。
A future-ready programme that builds students’ inquiring mindset, fosters their desire to learn, and prepares them to excel at their careers and lead meaningful lives.
(訳)生徒の探究心を高め、学習意欲を育み、優れたキャリアを築き、有意義な人生を送るための準備をする、未来に即応したプログラム。
これにより、大学生活だけでなく、その後の社会での活躍にも直結するスキルが身に付きます。
ちなみに、日本の大学の中にも、IBのスコアを考慮した入試制度を採用しているところが結構多くあるんですよ(出典)。
DPの解説記事を用意したので、ぜひそちらを参照ください。
多面的な成長
IBでは幅広い教科が提供されており、特定の専門分野にとどまらず、文系・理系の両方を学ぶことで、多角的な思考力を養うことができます。
また、IBでは論文作成やグループワーク、ディスカッションがカリキュラムに組み込まれており、コミュニケーション能力や協働作業の重要性を学ぶ機会が豊富です。
こうした総合教育は、グローバル社会で必要とされるスキルを早期に身に付けることができ、日本国内外での活躍を目指す生徒にとって非常に有益です。
日本のIB教育の修了生のインタビューもあるので、参考にされてください。
IBの普及に向けた文部科学省の取り組み
日本では、国際バカロレア(IB)は、文部科学省の積極的な支援によって普及されつつあります。
文科省が先に動き、形になり始めたらコンソーシアムを作って軌道に乗せる流れですね。
文科省
グローバル人材の育成が求められる中で、文部科学省は2011年に『スーパーグローバルハイスクール』事業の一環としてIBの導入を推進しました。
一例として、愛知県の旭ヶ丘高校というトップ校のスーパーグローバルハイスクール事業の要旨にも、バカロレアの記述が見られます。
2013年からは、日本語でディプロマプログラムを受けられる『日本語DP』も導入され、日本語と英語の両方で学ぶことができるバイリンガルプログラムが整備されています。
文部科学省IB教育推進コンソーシアム
平成30年度(2018年度)には、文部科学省は、IB教育の普及を目的として、文部科学省IB教育推進コンソーシアムを設立しました。
コンソーシアムの事業は以下の4つです。
文部科学省IB教育推進コンソーシアムの事業
- コンソーシアム体制整備
- 国際バカロレアの好事例の波及、導入を検討する学校等への支援業務
- プラットフォームの構築・運営業務
- シンポジウム等の開催業務
コンソーシアムの動画があるので、ご覧ください。
このような専門的な団体を設立することの効果は、スピードアップと効率化ですね。
文科省はIBだけを仕事にするわけにはいかないので、特化した組織が機動的に動いた方が速いのです。
実際、2022年までに国内のIB認定校の数は着実に増加し、191校が認定又は認定候補となっています(出典)。
認定校・認定候補校の一覧を載せておきます。
仕方のないことですが、東京が圧倒的に多いですね。
まとめ
本記事では、国際バカロレア(IB)の普及に向けた文部科学省の動きを中心に紹介しました。
以下にまとめます。
本記事の要点
- IBについて
- 1968年にスイスで設立された教育プログラム『国際バカロレア』のこと
- ジュネーブにある国際バカロレア機構が統括
- 対象年齢は3~19歳で、年齢に応じて4つの主要なプログラムがある
- 生徒たちは6つの教科グループの中から選択し、幅広い科目を学ぶ
- IBと日本の教育制度との違い
- IBでは生徒が受験に限らない幅広い分野から選び、主体的に学んでいくスタイルだが、日本では受験重視の受動的な学び
- IBプログラムがもたらす教育的メリット
- 海外の大学はIBのスコアを考慮とした入学コースが普及、日本の大学でも徐々に普及
- コミュニケーションスキルなど、社会に出てからも役立つような多面的な成長が期待できる
- IBの普及に向けた文部科学省の取り組み
- 文科省は、2011年ごろからスーパーグローバルハイスクール事業の一環として、IBを導入
- 2018年度には、文部科学省IB教育推進コンソーシアムを設立し、コンソーシアムが主体となって本格的な普及を開始