その疑問に答えるため、ペリー就学前プロジェクトの内容をわかりやすくお伝えします。
結論からいうと、幼児教育はその後の人生に好影響を与えます。
詳しく説明しますね。
ペリー就学前プロジェクトとは
ペリー就学前プロジェクトは、1960年代に始められた幼児教育の研究プログラムです。
アメリカの心理学者デイビッド・ワイカートによって提案され、アメリカの労働経済学者ジェームズ・ヘックマン博士によって研究発表がなされています。
ちなみに、ヘックマン博士は2000年にノーベル経済学賞を受賞した、ちょっとすごい人なんですよ。
日本でも著書が発行されているのですが、幼児教育に興味のある方にはかなり参考になると思います。
このプロジェクトは、貧困層の幼児たちに対して、非認知能力と認知能力を向上させることを目的として行われました。
幼児教育がその後の人生にどう影響するかを追跡調査したんですよね。
ペリー就学前プロジェクトは、幼児教育の重要性を示す初めての実験の一つとして、多くの注目を集めました。
非認知能力と認知能力
非認知能力
非認知能力とは、人間の行動や思考において重要な役割を果たす、意欲、自制力、信念、社会的スキルなどの能力のことを指します。
なかなか定量化されづらい、目に見えない能力ですね。
信念指数78!とか、聞いたことありませんもんね。
コミュ力が高い、居心地がいいなど、人間的な魅力に深く関係する能力が非認知能力です。
認知能力
認知能力とは、知的な能力のことで、言語、数学、理科などの分野の能力のことです。
IQなどによって定量化でき、外形的にわかりやすい能力です。
いわゆる『勉強ができる』系の能力や、近年話題のSTEM教育などで伸ばす能力は認知能力です。
ペリー就学前プロジェクトのやり方
時期と場所
対象者への教育期間は1962年〜1967年で、現在も追跡調査を継続中です。
また、アメリカのミシガン州イプシランティ(場所は以下)にある『ペリー小学校附属幼稚園』が舞台です。
幼稚園の名前からプロジェクト名がついたのですね。
対象者
対象となった子どもは123人で、年齢は3〜4歳、いずれもアフリカ系アメリカ人の貧困家庭に育ち、IQが70〜85と決して高くはない子たちでした。
IQ70〜85だと、精神障害かどうかグレーなゾーンです。
学校生活を続けられないリスクが高いという子どもたちですね。
方法
123人を2つのグループに分けます。
- 教育を受けない比較のためのグループ
- 教育を受けるグループ
教育を受けるグループは、2年間、月〜金で毎日2.5時間、プレスクール(幼稚園みたいなもの)に通いました。
プレスクールでは、教師1人につき子ども5〜6人の少人数制として、毎週1.5時間の家庭訪問も行いました。
また、両親は他の被験者の両親と毎月集まってミーティングをしていました。
教育はアクティブ・ラーニング形式で行われ、特に非認知能力を伸ばすことに重きを置いていました。
ここでいう非認知能力とは、例えば、忍耐力、問題解決力、やり抜く力などです。
結果
結果をグラフにまとめたので、ご覧ください。
2つのグループ間の差が如実に現れています。
(参考文献に基づいてSakackyが作成)
プロジェクトの結果、幼児教育の投資リターンまで算出されています。
なんと、幼児教育に1ドル投資すると、7.16ドルのリターンを見込めるそうです。
7倍ですから、投資として見た場合、とても魅力的ですね。
参考文献:米国司法省の記事
ペリー就学前プロジェクトから分かる幼児教育の重要性
ペリー就学前プロジェクトから、幼児教育の重要性が明確になりました。
幼児期には、脳の発達が最も速い時期であり、この時期に教育的な刺激を与えることで、将来的な人生の成功につながることが示されました。
また、幼児期には、非認知能力を伸ばすことで、自己コントロールや社会的スキルの強化につながり、よりよい人生につながることもわかりました。
親として何ができるか
ペリー就学前プロジェクトでは、非認知能力を伸ばすことが人生に好影響を与えることがわかりました。
では、非認知能力を伸ばすため、親としては何ができるでしょうか。
日本アタッチメント育児協会の基調講演記事によると、非認知能力の獲得には、どうやら『愛着(アタッチメント)』や『安全基地』が重要とのことです。
ベネッセの記事も参考になるので、よければどうぞ。
日本政府の最新取り組み
実は、文部科学省が、ペリー就学前プロジェクトのような追跡調査をするというニュースがありました。
数万人の5歳児を対象に、幼児期の教育や体験活動、家庭環境がその後の人生にどう影響するかを調べるものです。
調べた結果に基づいて、よりよい教育プログラムを開発するんだとか。
もっと早くにやってほしかったですね。。
まとめ
本記事では、ペリー就学前プロジェクトの内容について解説しました。
以下にまとめます。
本記事のまとめ
- ペリー就学前プロジェクトは、1960年代に始められた幼児教育の研究プログラムで、幼児教育が人生に与える影響を調査したもの
- 非認知能力とは、人間の行動や思考において重要な役割を果たす、意欲、自制力、信念、社会的スキルなどの能力
- 認知能力とは、言語、数学、理科などの分野における知的な能力
- ペリー就学前プロジェクトの概要
- 時期:1962年〜1967年
- 場所:ペリー小学校附属幼稚園
- 対象:アフリカ系アメリカ人の子ども123人
- 方法:優れた幼児教育を施すグループとそうでないグループの2つに分け、追跡調査
- 結果:幼児教育を受けたグループは、犯罪や収入、生活力などが改善
- 親としては、愛着の形成や安全基地の確立に取り組みたい
- 文部科学省も、数万人の5歳児を対象にした追跡調査を行うとのニュースあり