そういった疑問にお答えします。
本記事では、アクティブラーニングに関して以下の内容を解説します。
本記事の内容
- アクティブラーニングの定義
- アクティブラーニングが導入される背景
- アクティブラーニングの手法
- アクティブラーニングで身につく力
- アクティブラーニングの事例
- アクティブラーニングを家庭で試す方法
最後までお付き合いいただけたら幸いです。
アクティブラーニングとは
アクティブラーニングとは、文部科学省によると、以下のように説明されています。
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。
また、松下佳代(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)編著『ディープ・アクティブラーニング 大学授業を深化させるために』から、以下の解釈も紹介されています。
学生にある物事を行わせ、行なっている物事について考えさせること
参照:文部科学省
要するに、受身型の学習ではなく能動的な学習、自ら動いて考える学習が、アクティブラーニングってことですね。
アクティブラーニングが導入される背景
アクティブラーニングが導入される背景は以下の3点に集約されると考えられます。
- 時代の変化
- 世界的な流れ
- 国の方針
具体的に説明します。
時代の変化
第2次産業が急進していた1990年代くらいまでは、方針がはっきりしていました。
よいものを速く大量に作る。
作れば売れる時代でしたからね。
与えられた課題を効率的にこなすことが、社会人に求められる能力でした。
しかし、インターネットが普及し国際的な境がなくなってボーダーレス社会になってからは、多くの価値観が瞬時に混ざり合って変化するので先行きを読みにくい時代になりました。
アルファベットで表現すると、VUCA(ヴーカ)です。
VUCA(ブーカ)とは、『Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)』の頭文字を取って作られた言葉です。
つまり、変化が激しく予測不可能であり、複雑化した社会の様子を表しています。
VUCAの時代では、『与えられた課題』『政府や企業の方針』といったものが、来年・来月には間違っていることもありえます。
このような時代では、自ら考え、自ら行動する力が求められるのは言うまでもありませんね。
ちなみに、ボーダーレス社会を深く学びたい方には、以下の本が超オススメです。
人類の叡智、ビジネス界のゴッドじぃちゃん・大前研一さんがわかりやすく解説してくださっています。
世界的な流れ
下のグラフをご覧ください。
PBLという探求学習の導入率をOECD諸国で比較したものです。
アクティブラーニングの普及度と相関があると思ってもらってOKです。
メモ
PBL(Project Based Learning)・・・プロジェクト型学習。答えが決められていない問いに取り組む課題解決型の学習。
日本がかなりの下位にあることは一目瞭然ですよね。
他国に引けをとらないように、日本もアクティブラーニングを導入すべき、となるわけです。
国の方針
文部科学省としては、2017年の学習指導要領の資料に『アクティブラーニング』を使っていますが、2020年の資料には記載されておらず、『主体的・対話的で深い学び』を使っています。
アクティブラーニングという言葉こそ使っていませんが、『主体的・対話的で深い学び』はアクティブラーニングを指しているに違いありません。
文部科学省は、学習指導要領を変えるところから、アクティブラーニングを浸透させようとしています。
アクティブラーニングの手法
アクティブラーニングの手法は多岐にわたります。
この手法だから正解とかではなく、ケースに応じた手法を使い分けるのが大切なんです。
本当にたくさんあるので、参考リンクをご紹介しますね。
人の頭脳や心理との相性を考えたコミュニケーションの方法なので、そりゃあたくさんあるわけです。
アクティブラーニングで身につく力
アクティブラーニングは多くの力を育むことができますが、そのうちのいくつかを挙げて説明します。
アクティブラーニングが育てる力
- 思考力
- 判断力
- 表現力
- 主体性
- 協働性
思考力
アクティブラーニングでは、与えられたことに対して解き方を暗記してこなすのではなく、手探りでも自分で考え方を見つけて課題をクリアしていきます。
その過程では、自らの頭で肩にハマらずに考える『思考力』を使わざるを得ないですから、自然と思考力が身につきます。
判断力
アクティブラーニングでは、細かく正解が決まっている課題をこなすわけではないので、方向性が合っているかを自分で判断する必要があります。
少ない材料でもかき集めて、自ら判断する経験によって、判断力・決断力を身につけられます。
表現力
アクティブラーニングでは、自分の頭の中や自分だけのノートで完結しません。
考えを形にして人に伝えながら進めるやり方も多いです。
人に伝わらないと始まらないため、自然と表現力を身につけることになります。
主体性
アクティブラーニングでは、先生が全部教えてくれるわけではありません。
文部科学省の言葉にもあるとおり、『主体性』は非常に重要なキーワードです。
課題があるのかないのか、クリアするにはどうしたらいいのか、誰と協力すればいいのか、など、自分で考えて動く必要があります。
その結果、主体性を身につけることになります。
主体性を重要視する点は、モンテッソーリ教育に通じるところがありますね。
協働性
チームワークの力といってもいいです。
アクティブラーニングには、単独よりも複数での活動も多くあります。
『三人寄れば文殊の知恵』とはよく言ったもので、協調して活動すると、思いもよらないアイディアが出たりするのです。
(僕も開発の現場で日々実感しています。)
そうしたグループワークを通して、協働性を身につけていきます。
アクティブラーニングの普及状況
リクルート総研が2018年に1203校の高校から得たアンケート回答によると、『学校全体で導入している』と回答した高校は、2014年から2018年までに、8.7%から29.3%まで増加しました。
改善してはいるのですが、学校全体で取り組んでいる高校が3割というのは、少ない気がしますよね。
上述したとおり、OECD諸国の中でも低いですし。
改善傾向にはあるので、今後に期待しましょう。
アクティブラーニングの事例
アクティブラーニングの実践事例を6つ紹介しますね。
アクティブラーニングの実践事例
- 同志社大学
- 岡山大学
- 渋谷教育学園渋谷中学高等学校
- 岩手県立盛岡第三高等学校
- ポピンズアクティブラーニングスクール
- KODOキッズステーション
同志社大学
同志社大学では、2006年に『プロジェクト科目』を新設しました。
キャリア形成支援科目の位置付けです。
プロジェクト科目の目的は以下のとおりです。
地域社会や企業の方々に講師をお願いし、地域社会と企業がもつ「教育力」を大学の正規の教育課程の中に導入することによって、学生に生きた智恵や技術を学ばせるとともに、「現場に学ぶ」視点を育み、実践的な問題発見・解決能力など、いわば学生の総合的人間力を養成することを目的としています。(同志社大学webサイト)
僕もプロジェクト単位で仕事をすることが多いのですが、本当にオールマイティな力が要求されます。
大学生でプロジェクトに携われると、実用的でとても濃い経験になりますね。
岡山大学
岡山大学では知識獲得と創成力(企業技術者として新たな技術・製品を開発する能力)の獲得を目指しています。
この目的達成のため、伝統型の講義とPBL(問題解決型授業)を行なっています。
PBLでは唯一解のない課題を生徒に与え、自分で目標をたて、無数にある答の中から最適なプロセスを学ばせる方法をとっています。
また、発想型技術者には、正確で論理的な『読む、書く、話す』という日本語力が不可欠と考えているようです。
その結果、機械工学コースでは、読む訓練で知識力、書く訓練で思考力、話す訓練で判断力の養成を行っています。
動画があるので、ご覧ください。
渋谷教育学園渋谷中学高等学校
『自調自考』を掲げ、自分で調べて自分で考えることを基本としています。
SGH(スーパーグローバルハイスクール)にも選ばれており、早くからアクティブラーニングを取り入れています。
自主性を大切にするということで、ノーチャイムに校則なしという珍しい取り組みも行われています。
校外研修では行先やテーマなどを自ら決め、事前学習・フィールドワーク・プレゼンテーションと、実践的な学習方法が取り入れられています。
また、同校を特徴づけるカリキュラムとしては自調自考論文があります。
自調自考論文は高校1年から2年間をかけて書く論文で、自らでテーマを決め、必要な資料を集め執筆していきます。
先生はあくまでもアドバイザーであり、助言が必要な時だけ生徒から求めます。
岩手県立盛岡第三高等学校
同校はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)なのですが、『SD総合』のカリキュラムのなかで行われたのが、被災地の復興を考える授業です。
被災地の見学、がれきの処理、復興特別講座や、復興街づくり、レポートの製作発表、など地元と深く関係するアクティブラーニングが行われました。
スーパーサイエンスハイスクールの一覧を載せておくので、参考にされてくださいね。
ポピンズアクティブラーニングスクール
インターナショナルな保育施設・学童保育施設ですね。
IT活用や、知的好奇心を刺激するプログラム、食育など、とても充実しています。
英語や科学、アートなど、知的な学びに対して主体的に取り組めるようにプログラムをつくっています。
KODOキッズステーション
茨城県内に拠点を持つ幼児教育施設ですね。
STEM×言語を主体的に学べるようになっています。
さすがはつくばのある茨城県。
STEM教育をあそびながら楽しんで受けられるのはいいですね。
アクティブラーニングを学べる書籍
アクティブラーニングをまず学んでから実践に移りたい方に、おすすめの書籍をご紹介します。
知識をつけてから取り組んだ方がいいですからね。失敗を回避しやすいので。
アクティブラーニングを家庭で気軽に試す方法
アクティブラーニングを受けた方がいいのはわかりますが、なかなか環境も周りにないケースも多いでしょう。
以下では、家でも気軽にアクティブラーニングに取り組める方法をご紹介しますね。
ポイントは、子どもが楽しめる遊びなどに絡めることです。
ポイント
- 本・アニメ・映画・テレビ番組などの紹介
- 学校や幼稚園での体験報告
- 一緒に考える、やってみる
- 旅行の計画
本・アニメ・映画・テレビ番組などの紹介
子どもが好きな本やアニメ、映画やテレビ番組ってありますよね?
子ども自身に内容を解説してもらうんです。
- どんな感情を抱いたのか
- 聞き手は何がわからないのか
- どうしたら伝わるのか
- 解説を聞いてどう思ったのか
- もっと面白くするにはどうしたらいいか
- 番組などの製作方法はどうか
こういったことを、対話を通じて出し合っていくのです。
できるだけ親がリードせず、そっとサポートする感じで。
学校や幼稚園での体験報告
外で経験したことを報告してもらうことも、アクティブラーニングになります。
なぜなら、自分が体験したことを、それを体験してない人に対して分かりやすく伝えるのは、かなり高度な技能が必要だからです。
親としても、『どうしたらわかりやすく伝えられるか』を意識してつつ、穏やかに聴き、質問して、気づかせてあげましょう。
一緒に考える、やってみる
親が教えるスタイルを一旦すてます。
親も子どもの目線から見て、一緒に考えて、挑戦してみるのも、子どもの学びにとっては良いですよ。
教えてくれない相手と会話をしたり色々と試したり相談したり。
自分で動かないとものごとが進まない状況をあえてつくることで、自主性を育みます。
旅行の計画
旅行を計画するのも、アクティブラーニングの好例です。
なぜなら、旅行の計画には、自ら調べて動かないと成立しない要素が数多く含まれているからです。
自分一人で決めるのではなく、相手と相談して目的地や旅程を決める段階から始まり、予算や持ちものなどを打ち合わせる必要があります。
協働しないと成り立たない要素が多いので、協働性も身につきますね!
まとめ
本記事では、アクティブラーニングとはどういうものかを説明しました。
以下にまとめますね。
ポイント
- アクティブラーニングとは、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称(文部科学省)
- アクティブラーニングが導入される背景として以下3点を紹介
- 時代の変化
- 世界的な流れ
- 国の方針
- アクティブラーニングの手法
- アクティブラーニングで以下の力を身につけられる
- 思考力
- 判断力
- 表現力
- 主体性
- 協働性
- アクティブラーニングの実践事例を6つ紹介
- 同志社大学
- 岡山大学
- 渋谷教育学園渋谷中学高等学校
- 岩手県立盛岡第三高等学校
- ポピンズアクティブラーニングスクール
- KODOキッズステーション
- アクティブラーニングを学べる書籍 として、
- アクティブラーニングを家庭で気軽に試す方法として以下を紹介
- 本・アニメ・映画・テレビ番組などの紹介
- 学校や幼稚園での体験報告
- 一緒に考える、やってみる
- 旅行の計画